いよいよこの夏にリリースされる注目のスマートフォンゲーム「イース6オンライン」。
このイースシリーズを30年以上にわたりつくり続けてきた日本ファルコムのトップ、近藤季洋 代表取締役社長は、イースシリーズ初のオンラインスマホゲーム版「イース6オンライン」にどんな期待を抱いているか―――。
近藤代表に、経営者として、いちゲーマーとして、イースシリーズ制作陣として、いまの想いを聞いた。
「今後は開発ラインを増やしていきたい」
―――創立40周年をむかえた感想と、今後の展望を。
自分は入社して23年目になり、「長いな」と思っていましたが、創立してから半分ほどの年月しか在籍していないんですよね。
自分が入社する前のことについては未だに謎も多く、知らないことが多いんですよ。多くの困難があったでしょうし、いまもなおオリジナルゲームの制作と販売を続けて、支持されている。
これはほんとうにみなさまへの感謝の念に堪えません。今後はさらに開発ラインを増やし、みなさんにお届けできるタイトルを増やしていきたいと考えています。
「創業以来続けてきたPCタイトルからの撤退が転換期」
―――この40年間で、印象的なできごとは? また、転換期は?
個人的には代表取締役になった直後に、創業以来続けてきたPCタイトルから撤退してコンシューマーへの展開に切り替えたことですね。
いま考えてみると、環境の変化に対して企業として必要な舵を切っただけですが、あの時はずっとPCゲームでやっていくと社員の多くが思い込んでいたので、ひとつの事件ではありました。
社長が自分に代わって間もないころでもあったので、みんなが不安を感じているのが伝わってきました。
「アイデアを出していくことを一番大事にしたい」
―――ゲーム業界は今後、どう発展していくと考えますか?
ゲームの独自性という点においてはインディーズが元気ですよね。
もともとは自分たちのいる業界もそれぞれがオリジナリティーを持ち寄り、影響し合って発展してきた業界なので、それは大事にしたいなと思います。
自分自身も一生懸命アイデアを出していくことを一番大事にしたいと思います。
「軌跡シリーズ最新作「黎の軌跡」もご期待を」
―――40周年を記念した活動、取り組みについて、教えてください。
リアルイベントが難しい時期ですが、40周年記念のグッズやコラボレーション、いつも以上に積極的な情報公開で盛り上げていきたいと考えています。
こういう時期だからこそできることを考えて実施したいですね。40周年の今年度に発売をしている軌跡シリーズ最新作「黎の軌跡」もご期待ください。
「イースシリーズは、初心者から上級者までが楽しめるように設計」
―――そして日本ファルコムといえばイース。イースシリーズと、「イース6」の魅力をお聞かせください。
イースシリーズはアドル・クリスティンを主人公とした一作でお話が完結するタイプのアクションロールプレイングゲーム(ARPG)です。
基本的にはアドル自身もまだ知識のない場所を訪れ、プレイヤーといっしょにその地域の謎を知って解き明かしていきます。
アクションは、初心者から上級者までが楽しめるよう設計されています。
だから初めての人でもアドルが主人公であるという知識だけで、十分に楽しめます。
「現ファルコム主力メンバーが気合いを入れて制作したタイトルが、このイース6」
実際ファルコムのタイトルのなかでも非常に多くの地域で幅広い世代の方に遊んでいただいています。
イース6もアドルがカナン諸島に流れ着き、地域の人間と交流しながら島の謎を解き明かしていきます。
当時イースはしばらく新作が出ていなかったため、現ファルコム主力メンバーが気合いを入れて制作したタイトルが、このイース6です。
「日本ファルコムはオリジナルタイトルの新作に注力」
―――今回、イース6をスマホオンライン版としてレスター社からリリースすることになった経緯を教えてください。
Restar Games さんから熱心なご提案をいただいたことで始まりました。
日本ファルコム自身は、オリジナルタイトルの新作に注力する方針で動いていますので、こういった形で派生タイトルをリリースすることは昔から積極的に行ってきました。
イースシリーズはファルコム以外からリリースされたものでも非常に評価が高いタイトルもあるので、イース6オンラインも楽しみにしています。
「イースシリーズは新しいアクションRPGを進化させる場」
―――今後の展望も含めて「イースシリーズ」は、日本ファルコム内でどんな位置づけですか?
先輩たちがつくったイースは自分たちにとってお手本、教科書のようなものです。
以前は何とかそれを受け継いで、ユーザーに受け入れてもらえるよう試行錯誤してきました。
いまはそれをベースにさらに新しいアクションRPGを進化させる場となっています。実際に最近のイースは常に新しいシステムを取り入れながら進化しています。
イース1のマニュアルで、アドルの冒険日誌は百冊以上残されていると語られているので、シリーズを継承しながら続けていれればいいなと考えています。
「ファルコム音楽フリー宣言は、多くの人に聴いてもらいたいという思いから」
―――イースシリーズはBGMも魅力。あらためてファルコム音楽フリー宣言について、その意図をお聞かせください。
ファルコムのゲームミュージックが注目を集め、「演奏会やライブなどで演奏したい」「店内や演劇のBGMに使用したい」といった問い合わせは普段からたくさんいただいています。
多くの人に利用してもらいたい、楽しんでもらえいたいという思いから、それに応えるかたちを取っています。
最初は不正利用を防いだり、お店や舞台で使いたいという問い合わせにどう対応するかという話し合いから始まったんです。
いろいろと検討していくなかで、「制限するよりは、多くの人に聴いてもらいたい」という気持ちから、フリー宣言に至りました。
「主人公なのにほとんどしゃべらない」
―――近藤代表が「イース」シリーズのキャラクターのなかで好きなキャラは?
シリーズ通してということであれば、やっぱり主人公のアドルでしょうか。
プレイしたことある人たちはご存じだと思いますが、主人公なのにほとんどしゃべらない。
それはアドル自身がプレイヤーであり、ゲーム内で体験することはプレイヤーの体験だからというコンセプトをイースシリーズが貫いているからです。
「思い入れがあるのは、イース8のダーナ」
軌跡シリーズのRPGであれば強敵に遭遇したり見たことのない景色に出会った主人公が感想をいい、それをプレイヤーが受け止めるという完成した形ですが、イースはプレイヤーがゲームをプレイすることで初めて完成するタイプのゲームです。
このイースのアドルのような主人公がいてもいいかなと考えています。
また、自分が関わったなかで思い入れがあるのは、イース8のダーナでしょうか。一番悩みましたし、W主人公をはじめ、新しいことを試したキャラです。
「イースのアクション性をスマホゲームでどう描いているかが楽しみ」
―――シリーズ初のスマホオンライン版「イース6 オンライン」のどこに期待していますか?
イースシリーズはもともとオンラインゲームではないので、オンライン要素を取り入れることでどう生まれ変わるのかなといった点についてはとても楽しみです。
また、イースといえばアクションなので、スマホでイースアクションがどうなるのかという点も注目しています。
実はスマホのアクションというのはファルコム社内でもときどき考えるのですが、なかなかこれだというものが出てこないのが実情です。だからこそ、イース6オンラインはとても楽しみです。
「なるほど! と思わせてくれるようなシーンに期待」
―――今回の「イース6 オンライン」は、プレイヤーはアドルではなく、オリジナルキャラクターを操作します。
オンラインゲームになるという時点で、アドルを操作するゲームになるとは思っていませんでした。
だって、アドルをオンラインで操作するとなると、アドルだらけになっちゃいますよね?
過去にも設定の必然から、アドルが登場しないファルコム製のイースもありました。
プレイヤーキャラでないことを逆手に取って、「なるほど!」と思わせてくれるようなシーンを期待しています。
「イース6オンライン」をきっかけに、歴史あるアクションRPGの世界へ
―――最後に、ゲームファン、イースファンへのメッセージを。
イース6は初めて自分たちが取り組んだ、移植作ではない新作イースでした。
タイトルを聞くだけでも当時のスタッフの情熱やプレッシャーが思い浮かびます。
そのイース6が、今度はスマホでオンラインゲームになるということで、わたしも“いちプレイヤー”として楽しみたいです。
イースをすでに知っている人にはもちろん手に取ってもらいたいですし、知らない人は「イース6オンライン」をきっかけに、この歴史あるアクションRPGの世界をぜひ知っていただければと思います。
これからもよろしくお願いします。
◆日本ファルコム 近藤季洋 代表取締役社長―――1975年生まれ、同志社大学 経済学部を卒業し、日本ファルコムへ新卒入社。2007年に社長に就任し、いまもプロデューサー・ディレクターとして自らゲーム制作の陣頭指揮をとっている。
◆イース6オンライン公式HP(App Store / Google Play ともに事前登録受付中)
https://ysvionline.restargames.jp/
◆イース6オンライン公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCfybHErRDUncSGS1eSuZDXA