膀胱の下、骨盤の最も深いところにある、男性だけにある臓器―――前立腺(ぜんりつせん)。
この前立腺のがん(ガン/癌)が、前立腺癌。国立がん研究センターがん対策情報センターの報告によれば、2008年の前立腺癌の罹患数5万1,534人と比較し、2018年は9万2,021人で 、10年間で約1.8倍と増加傾向にある。
また2021年の前立腺癌の罹患数予測は9万5,400人で、まだまだ増加の一途をたどる気配。
増える前立腺癌のリスクを有意に低下させる大豆由来成分「エクオール」の研究結果に注目
こうした増加傾向にある前立腺癌に対し、注目の研究結果がある。
国立がん研究センターの疫学研究では、血中「エクオール」が高いグループは、エクオールが検出できなかったグループに比べて、有意に前立腺癌患者の割合が低く(オッズ比:0.60)、いっぽう他の成分(ダイゼイン、ゲニステイン)では関連性がないことがわかった。
また、文部科学省科研費の日本他施設コホート研究(JACC STUDY)のひとつに、その前立腺癌との関連性について、大豆に含まれる成分「ゲニステイン」「ダイゼイン」、そして、ダイゼインから腸内細菌によってつくられる「エクオール」の3成分を比較したところ、血中「エクオール」が高いグループはエクオールが検出できなかったグループに比べて、有意に前立腺癌患者の割合が低いことがわかり(オッズ比:0.39)、他の成分では前立腺癌との関連性は認められなかった。
このように、独立した各々の疫学調査で同じような結果が出たことで、現代の日本で増加傾向にある前立腺癌に対して、エクオールの有用性の可能性が出てきた。
今後、さらなる研究が期待されているエクオールについて、その基礎を知ろう↓↓↓
このエクオールとは
エクオールは、腸内細菌によって大豆イソフラボンから産生される大豆由来の成分。
女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用があり、軽度な手指関節の不調の改善だけでなく、更年期症状の緩和、骨密度の低下抑制、肌シワの改善、生活習慣病の予防に役立つといわれている。
大豆やイソフラボンをたくさん摂取すればいいのか?
実はそのエクオールを産生できる人は、日本人の2人に1人しかいないといわれ、エクオール産生菌を持っていなければ、大豆イソフラボンをいくら摂取してもエクオールは産生されず、エクオールのチカラを活かすことはできないという。
エクオールがつくり出せるかどうか、調べられるか?
検査キット「ソイチェック」で採尿した尿を郵送するだけで調べられるうえ、同キットを取り扱う医療機関もある。
エクオールをつくれない人はどうしたらいいか?
エクオールをつくれない人はもちろんのこと、エクオールをつくれる人でも、大豆を食べない日や腸内環境によってつくれない日もあるので、「エクオール含有食品」で補うのがおすすめという。
エクオール含有食品は、現在ではさまざまな商品があり、産婦人科などの医療機関でも取り扱われているものもある。
毎日食べるものだから、どの菌からつくられているか、わかるものが安心といわれている。
※調査結果 出典:Ozasa. K., et al.; Cancer Sci. 95, 56-71, 2004 : 改変
※調査結果 出典:Kurahashi. N., et al.; J of Clin Oncol. 26, 5923-5929. 2008 : 改変