イミュニティリサーチの免疫プロファイリング・モニタリング rippleT リプレット、腫瘍免疫領域で社会実装めざし資金調達などの加速へ意欲

血圧を測る、コレステロール値を測る、と同じように、免疫を測るという自動化・数値化のトレンドがみえてきた。

「免疫の力を数値化し、世界中に残されている健康問題の解決をめざす」というイミュニティリサーチ(東京・丸の内)が手がける免疫プロファイリング・モニタリングシステム「rippleT」もそんなトレンドのひとつ。

免疫プロファイリング・モニタリング「rippleT」のローンチ背景

がんで亡くなる人は世界で800万人以上を超えるといわれるなか、これまでの治療法は手術療法、放射線療法、細胞傷害性抗がん剤療法が中心だった。

最近では、免疫チェックポイント阻害薬の登場で、免疫療法が加わり、がん治療が大きく変わろうとしている。
 
免疫チェックポイント阻害薬は免疫応答のブレーキを解除し、T細胞による抗腫瘍効果の発揮を促進。実際、固形がんに対して、副作用も少なく、劇的な効果があることが示されている。

いっぽう、いまだ薬の価格が高く、効果のある人が少ないという課題があり、これを解決すべく「他の治療法と合わせた併用療法を開発する」「バイオマーカーを用いて効果のある患者を投与前に選別、患者を層別化する」の2点に注目が集まった。

そこで直面したのが人的作業によるエラーや偏り

このバイオマーカーを発見するには、多くの患者データを集め、予備的な知見や仮説にもとづいて特定項目を測定し、統計的有意差が見いだされるものを発見していくという工程。

測定項目の決定は、訓練されているとはいえ、人が行う実作業で、感覚的な判断、偏りなどもあり、さらにこの作業には時間がかかるという課題もあった。

免疫細胞プロファイリングと臨床解析を⾃動化「rippleT」

こうした背景・現状を解決・打破すべく、イミュニティリサーチは「rippleT」(リプレット)を開発。

rippleTは、免疫細胞プロファイリングと臨床解析を⾃動化するシステムで、免疫学の専⾨知識や臨床統計の知識がない担当者でも、導⼊後すぐに利⽤でき、これまで研究者が⼿作業で⾏ってきた免疫モニタリングや免疫プロファイリングを⼤きく効率化し、新たな治療法、医薬品開発につながるという。

また自動化によって解析時間短縮、手作業の軽減、ミスの軽減にもつなげ、高速化によってこれまで人の目で見切れなかった部分まで見ることができるようになる。

さらに、免疫学の専門家の意見をもとにプログラムを実装し、高度な知識が求められるクラスタリングやアノテーションも簡単操作で自動解析してくれる。

マシンスペックに依存せず、WEB上で解析作業ができることから、場所や時間に縛られず解析作業を実現させられる点も特長。

◆免疫プロファイリング・モニタリングシステム「rippleT」
https://www.cd62l.jp/

「国内投資家にもこの事業を広く知ってもらいたい」

8月4日には都内で、イミュニティリサーチ サイエンス顧問のひとり、北野滋久医師(がん研究会有明病院 先端医療開発科 部長 がん免疫治療開発部長 埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科 客員教授)とイミュニティリサーチ 安河内正文 代表取締役(画像右)が登壇し、「腫瘍免疫学が切り拓く新しいがん治療」というテーマでセミナーを開催。

安河内正文 代表は、「腫瘍免疫領域で次のステージはベンチャーから社会実装で、資金調達などにトライしていかなければならない。海外の投資家が注目してくれているなか、国内投資家にもこの事業を広く知ってもらいたい」と語った。

イミュニティリサーチ サイエンス顧問 北野滋久医師が編集を努めた「必修!腫瘍免疫学」(金原出版)について

がん治療に革命をもたらしたがん免疫療法は、いまや第四のがん治療として急速に適応が拡大し、着実にエビデンスが積み重ねられている。

がん治療に携わる者にとって、がん免疫療法の基礎知識と臨床応用を修得することは必須となりつつあり、今後の発展を担う次世代の腫瘍内科医育成は急務といえる。

そこで、最前線で活躍する研究者たちが集結し、基礎知識から臨床応用まで分かりやすく解説。初学者必読の入門書となっている。