埼玉工業大学の後付け自動運転システム搭載バスに全国の路線バス事業者が注目する理由、緑ナンバーで1万km営業運転し正着制御誤差3mm以内

「埼玉工業大学は深谷の宝。埼玉工業大学やアイサンテクノロジー、ティアフォーで開発がすすむ後付け自動運転システム搭載バスが日々進化していることを実感している」

そう語るのは、埼玉県深谷市 小島進 市長。

―――埼玉県深谷市にキャンパスを構える埼玉工業大学、深谷市、A-Drive(神奈川県横浜市)、アイサンテクノロジー(愛知県名古屋市)、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、KDDI(東京都千代田区)、ティアフォー(愛知県名古屋市)、深谷観光バス(埼玉県深谷市)の8者が連携し、レベル4による路線バス営業運転実現に向けた取り組みが加速する。

「日本経済の礎を築いた渋沢栄一の故郷で、社会の関心が集まる技術の先進事例をつくっていきたい」と小島市長が意気込むように、なぜいま埼玉工業大学の後付け自動運転システム搭載バスが、全国の路線バス事業者などから注目を集めているのか。

深谷自動運転実装コンソーシアム連携で加速

6月27日には、深谷市役所で、深谷自動運転実装コンソーシアム連携協定締結式が行われ、深谷市 小島進 市長、同 長原一 副市長、埼玉工業大学 内山俊一 学長、同 渡部大志 教授、アイサンテクノロジーモビリティ・サービス事業部 山崎祐嗣 部長、A-Drive 岡部定勝 代表取締役社長、損害保険ジャパン 和田喜勝 埼玉支店長、KDDI オープンイノベーション推進1G 松田慧 グループリーダー、ティアフォー岡崎慎一郎 Vice President、深谷観光バス 越塚聡一 常務取締役らが登壇。

埼玉工業大学 渡部大志 教授は、後付け自動運転システム搭載バスのこれまでの道のりについて伝えた。

全国各地の路線バス事業者が実証実験に参画

埼玉工業大学の後付け自動運転システム搭載バスは、日野レインボーIIがベースの自動運転レベル2到達モデル。

2019年からこれまで、兵庫県 播磨科学学園都市、愛知県 日間賀島、長野県 塩尻市、栃木県 茂木町、千葉県 千葉市、愛知県 常滑市、千葉県 幕張新都心、愛知県 長久手市と、各地での実証実験を重ね、そのそれぞれの地で、地元の路線バス事業者が運行に関わり、動作を確認してきた。

「車両の開発には埼玉県の先端産業課の支援をいただいてすすめている」(渡部教授)

すでに緑ナンバーで自動運転バスを1万km以上営業運行

また、埼玉県深谷市で2021年2月から1年間、深谷駅や渋沢栄一記念館を結ぶ「渋沢栄一論語の里 循環バス」として、この後付け自動運転システム搭載バスが担い、28kmの区間のうち26kmを自動で走り、合計1万km以上を自動で営業運行してみせた。

さらに、埼玉工業大学の後付け自動運転システムは、走行精度や性能も注目を集める。

羽田空港での実証実験では、バス停留所の定められた停止位置に向けてオートで進入し、ブレーキの挙動をできるかぎりやわらかくしながら、まるで人が運転しているかのように静かに正確に停止位置に止まり、なんとその正着制御誤差は3mm以内に収めてしまった。

こうした実績から、「これならうちの既存のバス車両も自動化できる」と、各地の関係者が注目しているわけだ。

―――いよいよ深谷自動運転実装コンソーシアム連携で加速する、レベル4自動運転路線バスに向けた取り組み。

同コンソーシアムは、その期待される効果について、次の3点をあげていた。

◆地産地消の自動運転技術を地域公共交通に導入―――持続可能な地域公共交通を実現

◆観光資源をつなぐ交通ネットワークの構築―――新1万円札発行で増加する観光需要に対応

◆先端技術を活用したまちづくりの推進―――地域産業の創出、地域振興の推進