「乳がんは腫瘍を切除をしたら治ると思われがちですが、乳がんは切除してからが長い治療の始まりで、治療による薬の副作用や、身体の変化などで辛い思いをしている方たちがたくさんいます。
乳がんはタイプがありそれぞれ治療も異なります。長い治療や副作用は、周囲や職場などで理解されず治療との両立に悩み、辛い思いに悩まされている患者さんは少なくありません。
そんな長い治療に向き合う乳がん患者を仲間として応援できるのは、周囲の理解と正しい知識だと思います。
がんと向き合う患者たちが生きやすい世の中になればと考えています。難治性乳がんの正しい知識と理解を、仲間といっしょに伝えていきたいと思っています」
―――そう伝えるのは、北海道「とかち女性がん患者の集い プレシャス」に所属する認定がんピアサポーター。
正しい情報を伝え、治療に立ち向かう仲間を支え応援
「とかち女性がん患者の集い プレシャス」は、難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ実行委員会の一員としてこう伝えている。
「わたしたちにできることは、乳がんについて多くある情報のなかから正しい情報を伝え、治療に立ち向かう仲間を支え応援すること。これからもより多くの方へ正しい知識と、わたしたちの思いを発信していきたいと思います」(プレシャス)
難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ実行委員会では、桃凛(ももり)インスタキャンペーンを実施中。
難治性乳がん(トリプルネガティブ乳がん、再発ハイリスク乳がん、進行・再発乳がんなど)の患者さんや 患者さんを支える人たちの視点で、疾患の情報や、患者さんとご家族・ご友人の日々の生活をインスタグラムで発信している。
https://www.instagram.com/momorichan_campaign/
―――そこでまず、知っておきたい難治性乳がんという病。
再発への不安、薬の選択肢が少ない不安
乳がんには、大きく分けて、「ホルモン受容体陽性乳がん」「HER2(ハーツー)陽性乳がん」「トリプルネガティブ乳がん」の3つのタイプがある。
このなかでトリプルネガティブ乳がん」は、乳がん全体の約15~20%を占め、ほかのタイプの乳がんと比較し再発率が高く、再発後は急速に進行し、生存率も低いといわれる、いわゆる難治性乳がんのひとつ。
このトリプルネガティブ乳がん患者からは、再発への不安がつのり、再発患者は薬の選択肢が少ないことへの不安も広がっている。
近年、PARP 阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などの分子標的薬が相次いで登場し、薬の選択肢は広がっているとはいえ、トリプルネガティブ乳がん患者の状況はまだまだ改善されていないのが事実。
難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチは今後、「ピンクリボン活動のなかでも、こうした難治性の乳がん患者さんのサポートをしっかりとすすめていきたい」という。
さまざまなステークホルダーと協業し課題解決へ
有志の乳がん患者や支援者とともに立ち上げた難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ実行委員会は、正しい知識を普及することで、トリプルネガティブ乳がんや再発ハイリスク乳がん、進行・再発乳がんなどの難治性乳がんについての理解を深める活動を展開。
「ピンクリボンde上を向いて」もそのアクションのひとつで、「第3回ピンクリボンde上を向いて」の生配信で最初に登場したのが、北海道「とかち女性がん患者の集い プレシャス」。
「難治性乳がん、また乳がんの患者さんたちにこの夜景をみていただきたい。わたしたちも応援しています。エールを送ります」と伝え、こう続けた。
「有志の思いがひとつとなって各都市で開催された合同ライトアップは、多くの方の理解とご協力を得て、病気に立ち向かう勇気と決意を込めて、発信しました。
今年は昨年よりライトアップの意義に賛同くださる施設も増え、認知度が上がっていることはとてもうれしく思っています。このライトアップを通して理解と応援、そして検診の重要性が届くことを願っています」(プレシャス)
独自の活動で乳がん患者を支援
また、プレシャスでは、患者茶話会による情報交換、専用入浴着の普及など、独自の活動で乳がん患者を支援。
「5年前の立ち上げ当初は、専用入浴着などの認知度が低く、温浴施設や施設利用の方々の入浴着着用の理解が得られなく悲しい思いもしました。
しかしプレシャス独自で作成した専用入浴着啓発ポスターを持って訪問し説明し、ご納得の上ポスターを掲示するご協力温浴施設も増え、いまでは道内100軒以上になり、必要な方が専用入浴着を着用して気兼ねなく温浴できるようになりました。
またボランティアのみなさんや患者会でつくる手づくり乳房パットやケア帽子をイベント時や乳腺外科などに配布して多くの必要な方にお持ちいただいています。
さらに患者茶話会では、ピアサポーターとともに悩みなどを解決できるよう医療機関や行政につなぐお手伝いや、患者同士がサポートし合える茶話会、がんに関する勉強会などを開催しています。
10月のピンクリボン月間には、ピンクリボン講演会を通じ、検診の重要性を伝えました。
そして2年前、北海道で初めて音更町が乳がんと診断された方の胸部補正下着やウィッグの一部を助成し支援する取り組みが始まりました。
わたしたちが声に出し、結果につながった一部助成金支援。思いを声に出さなきゃ伝わらないことを実感しました。これからも、患者の声を発信していきたいと考えています」(プレシャス)
―――難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ実行委員会は、今後も難治性乳がん患者を中心に、乳がん患者支援団体はもちろんのこと、他臓器のがんの支援団体とも連携し、広く市民に呼びかけ、解決すべき課題について、医療者、行政、医療関係企業などを含めたさまざまなステークホルダーと協業して広く問題提起し、問題解決に取り組んでいくという。