群馬県の館林、大泉、太田をを結ぶ、18.4kmのローカル私鉄、東武野田線。
ブラジル人の姿も多く、シュハスコやフェイジョアーダを出すレストランやスーパーマーケットが並ぶ西小泉駅前(大泉町)と対照的に、無人で人の乗り降りがあまりない地味な駅が、3つ手前にある。
群馬県 邑楽町(おうらまち)、静かな集落のなかにひっそりある、篠塚駅。
開業は大正6年。103年も続く東武の駅で、1970年までは貨物の取り扱いもあったことから、Googleマップで上空から駅をみると、ホームの南側に3線ほどのヤードがあったとみられる跡がみえる。
なぜ篠塚という駅名がついたか。東武鉄道公式HPには、こう記されている。
「鎌倉時代から南北朝時代にかけて、篠塚重興から伊賀守重広まで五代にわたっての居住の地で、塚の周りには篠竹が生い茂っていたことから「篠塚」といわれた説もあります」
2両編成の8000系ワンマン電車に乗って、篠塚駅で降りてみると。昼間は案の定、乗降客の姿はひとりもない。
駅前にあるのは、立派な屋根瓦の「杉山商店」という、たばこ屋が一軒―――。
路地脇にたつ看板には「東武鉄道 きっぷ発売所 定期券購入取次所」とある。
そう。この杉山商店が、東武線のきっぷを売っている。いわゆる簡易委託。
杉山商店に入ると、たばこ類と並んで手書きの「東武線 普通旅客運賃表」や、おそらく有人時代の駅舎の写真がある。
2011年に訪れたときは、杉山商店のおばあちゃんが「はいはーい」と出てきて、きっぷを売ってくれた。それも、きっぷにぱちんとハサミを入れる改札鋏(かいさつきょう)省略版の薄いきっぷ。
引き出し箱のなかには、篠塚駅から140円・190円・240円のきっぷ。
「きょうはいい天気で。よかったじゃない。どこまで行くの」
次の電車まで30分あるから、ついでにコークボトルを買って、駅のまわりを歩いてみることにした。
西小泉駅まであと3つ。昼ごはんはフェイジョアーダ、シュハスコ、パステウ、どれにしよか。