「再エネ=脱炭素」だけでなく、いま中小企業に必要なのは“事業を止めないためのエネルギー戦略”ではないか―――。
再エネ100宣言 RE Action協議会は 9月11日、「『停電しない会社』をどうつくるか? 再エネによるBCP最前線を公表」と題した説明会を開き、小山貴史 理事、金子貴代 事務局長をはじめ、RE Action 参加企業の熊本利水工業 田中祐治 代表取締役社長、山崎 山崎正嗣 代表取締役、さらに熊本県 商工労働部 産業振興局 エネルギー政策課 霜出豊和 課長らが登壇し、その最新事例を伝えた。
※山崎の崎は、「立つ崎」(以下同様)
自ら必要なエネルギーを確保する動き
災害、エネルギー価格高騰、サプライチェーンからの脱炭素要請――。
いま、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変わりつつある。
「もし明日、電気が止まったら、事業を続けられるだろうか?」
そんな問いに対し、太陽光発電や蓄電池、EVなどを活用して、自ら必要なエネルギーを確保することで答えようという動きが広がっている。
今回の説明会では、2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震から約1カ月半、災害時の事業継続だけでなく、エネルギー価格の変動や脱炭素対応までを見据えた「エネルギー自立経営」の考え方と、実際に取り組む企業の事例が紹介された。
災害だけではない 中小企業を襲う「3つのリスク」
今回の説明会で示されたのは、中小企業を取り巻く外部環境の変化だ。
再エネ100宣言 RE Action では、大きく、(1)エネルギー価格の変動・高騰リスク(2)災害などによる電力需給の不確実性(3)サプライチェーンの情報開示や新制度への対応 という3つのリスクを提示した。
エネルギー価格については、2026年2月末のホルムズ海峡危機を背景に、原油・LNG価格が急騰。
資料によれば、WTI原油先物は3月9日に一時119.48ドル/バレルを記録し、LNGスポット指標のJKMも2月後半の約11ドル/MMBtuから3月には25ドル台半ばまで上昇したという。
つまり企業にとって電気は、単に「毎月購入するもの」ではなく、経営を左右するリスク要因になっている。
そして、もうひとつ見過ごせないのが「停電」だ。
資料では、令和8年熊本地震で最大約4万8530戸が停電したほか、過去には令和元年房総半島台風で最大約93万4900軒が停電し、停電解消まで約16日間を要した事例も紹介された。
さらに帝国データバンクの調査では、事業継続が困難になるリスクとして「自然災害」を挙げた企業は67.8%、「インフラの寸断」は36.8%。
ところが、中小企業のBCP策定率は18.3%にとどまり、大企業の39.9%を大きく下回る。
「リスクは分かっている。でも、なかなか備えきれない」
これが、多くの中小企業が抱える現実なのかもしれない。
「非常時を乗り切る」から「停電しない拠点づくり」へ
そこで今回、とくに印象的だったのが、実際に災害を経験した企業の事例だ。
なかでも山崎の事例は、「停電しない会社」という今回のテーマを象徴するものだった。
九州エリアで包装資材の卸売などを手がける同社は、2022年の台風14号で広域停電を経験。
宮崎営業所では停電・断水が発生し、サーバーもダウン。受注業務が停止するリスクに直面した。
そこで同社は、社用車のプラグインハイブリッド車など2台を非常用電源として接続。
電力を確保し、取引先への出荷・受発注ラインを維持したという。
しかし、この経験が単なる「災害対策」で終わらなかった。
同社はその後、「非常時を乗り切る」から「停電しない拠点づくり」へ、発想を転換した。
拠点の建て替えを機に、太陽光発電、蓄電池、空調設備を一体導入。
さらに九州内8拠点すべてに、移動式電源としても機能する給電可能車両を配備する計画を進めている。
これは「災害が起きたらどうするか」ではなく、災害が起きても事業を止めないために、平時から会社そのものを変えておくという考え方だ。
太陽光+蓄電池+EV=エネルギー自立経営という発想
再エネ100宣言 RE Action が今回提案したのが、この考え方を「エネルギー自立経営」として捉えること。
太陽光発電、蓄電池、EV・PHEVと給電設備などを組み合わせ、事業に必要なエネルギーを自社で確保する。
もちろん、狙いは災害時だけではない。
平時には自家消費によって電力購入量を抑え、エネルギー価格の変動リスクを抑制する。そして災害時には、自立運転や蓄電池、EVなどを活用して電源を確保する。
さらに、再エネ導入は温室効果ガス排出量の削減や、サプライチェーンから求められる脱炭素対応にもつながる。
つまり、「環境対策」「電気代対策」「BCP」「企業競争力」を別々に考えるのではなく、エネルギーを経営戦略そのものとして捉える。
これが「エネルギー自立経営」のポイントだ。
「再エネ100%」は大企業だけの話ではない
ここで注目したいのが「再エネ100宣言 RE Action」だ。
再エネ100宣言 RE Action は、企業、自治体、教育機関、医療機関などが使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、社会全体の再エネ利用100%を促進する枠組み。
RE100が主に大企業を対象としているのに対し、RE Actionには中堅・中小企業や自治体、教育機関、医療機関なども参加できる。2026年9月時点で368団体が参加している。
しかも、現時点で再エネ100%を達成していなくても参加できる。
参加後は、再エネ100%への目標を設定し、消費電力量や再エネ率などの進捗を毎年報告する仕組みだ。
「再エネを導入してから参加する」のではなく、これから再エネ化を進めていく企業が、その意思を明確にする場ともいえる。
再エネ100宣言 RE Action に参加するメリット
企業が 再エネ100宣言 RE Action に参加することで、どんなメリットがあるのか。
公式サイトでは、企業・団体価値の向上やビジネスチャンスの拡大、再エネ導入実績の把握・公表によるPR機会、ロゴの使用、再エネに関する情報収集・相談、参加団体やRE100参加企業との交流、さらに助成金・補助金制度や融資プログラムで加点対象となる可能性などを挙げている。
とくに中小企業にとって興味深いのは、「再エネを導入すること」だけがゴールではないという点だ。
再エネへの取り組みを社外に発信することで、取引先へのアピールや企業ブランディング、人材採用などにもつながる可能性がある。
また、再エネ導入の先進事例を知ったり、事務局に相談したり、参加企業同士で交流したりする機会も用意されている。
「事業を止めない」ための再エネへ
今回の 再エネ100宣言 RE Action 説明会でみえたのは、再エネの意味が少しずつ変わってきているという点。
脱炭素は重要、しかし企業経営の現場から考えれば、それだけではない。
電気料金が上がったらどうするか、災害で停電したらどうするか、取引先から脱炭素対応を求められたら…。
―――こうした問いに対して、太陽光発電や蓄電池、EVなどによって「自分たちが必要とするエネルギーを、自分たちでも確保できる状態」をつくる。
それは、環境対策であると同時に、経営を守るための投資でもある。
実際、山崎の資料でも、BCP投資を単なる「コスト」ではなく、平時の電気代削減と一体化した「事業継続と信頼への投資」として捉えている。
そして同社は「再エネ×防災」で「停電しない企業」として地域社会とともに成長する姿を掲げている。
停電しない会社は“特殊”ではない
「『停電しない会社』をどうつくるか?」
重要なのは、停電しても事業を止めないための備えを、平時から経営の中に組み込んでおくという発想。
再エネ100宣言 RE Action では現在、電気代リスクヘッジ、災害対策、サプライチェーンの脱炭素化、資源循環など、再エネ導入をめぐる70の先進事例を公開中↓↓↓
https://saiene.jp/
「会社を止めたくない」「社員を守りたい」「取引先への供給を止めたくない」「地域のインフラを支えたい」という、極めて現実的な経営課題がある企業にとって、「何か起きてから考える」のではなく、何も起きていない今こそ、事業を止めないためのエネルギー戦略を考える、いま絶好の機会かもしれない。
