故人のパソコンやスマートフォンなどに保存されたデータや、インターネットサービスのアカウント・ID、パスワードなど“デジタル遺品”をどう終活するか―――いわゆるデジタル終活が、いま超高齢化社会のなかで課題視されている。
これが、中小企業経営者などは、経営者個人だけがパスワードやネットバンキングなどを管理するケースも多く、突然他界してしまったときに、残された人たちが困惑する事象があちこちで多発する。
デジタル終活は
中小企業経営者にとって
必要不可欠な生前対策
「故人のスマートフォンやパソコン・タブレットのログインパスワードが分からず、デジタル機器内にアクセスできない場合、会社の業務で必要なデータやネットバンキングなどのサービスにアクセスできず、会社の事業活動に支障が生じる恐れがあります。
また、葬儀で必要な遺影写真や連絡先等のデータ、故人の財産に関する情報(ネット証券などの口座情報)にアクセスできず、遺族の事務負担が増大する恐れもあります。
そのため、上記のトラブルを予防することができる「デジタル終活」は、中小企業経営者にとって、必要不可欠な生前対策といえるでしょう」
―――そう語るのは、緊急事業承継監査協会 伊勢田篤史 代表理事(弁護士・公認会計士)。
「生前から共有できる仕組みを」
「中小企業経営者が「デジタル終活」としてやるべきことは、業務で使用しているデジタル機器のログインパスワードの共有です。
生前から共有しておく方法もありますが、エンディングノートやスマートフォンの「スペアキー」などを活用し、万一の際に、ログインパスワードを家族などに伝える仕組みをつくることも考えられます。
あわせて、ネットバンキングなどの業務で使用しているサービスのIDやアカウントについても、万一の際に、共有できる仕組みをつくっておくと良いでしょう」(伊勢田 代表)
―――伊勢田 代表がこうアドバイスす背景には、エヌエヌ生命保険が、11月22日「いい夫婦の日」を前に、全国の既婚の男性中小企業経営者 250名と、中小企業経営者を夫に持つ妻 250名を対象に「デジタル終活」に関する意識調査の結果を受けてだ。
エヌエヌ生命 デジタル終活 調査結果
(1)「デジタル終活を知っている」25.6%、「デジタル終活で何をすべきか知っている」のは11.4%、「既にデジタル終活をしている」のは3.0%のみ
(2) 自分の持っている「スマートフォン」に、配偶者に内容を見られたくないデータ等が保存されている夫、および妻は32.8%、「パソコン・タブレット」においては夫18.8%、妻9.6%
(3)配偶者に最も見られたくないデジタルデータは、夫も妻も「ショートメッセージアプリ(LINEなど)」(夫9.6%、妻14.8%)
(4)配偶者に秘密にしていることがある夫47.6%、妻32.0%
(5)配偶者よりも先に亡くなりたいと思う夫58.8%、妻31.6%
(6)もし、配偶者より先に亡くなったら、夫が妻にしてほしいこと1位は「遺産の整理」(44.0%)、妻が夫にしてほしいこと1位は「自立した生活」(44.4%)
(7)「終活」をしようと思う42.4%、既に「終活」をしている5.4%
(8)夫婦どちらかが亡くなった後の将来について、配偶者と普段から話し合いをしている22.2%。もし、配偶者に万一があった場合、その後自分に何をしてほしいか知っている18.0%
(9)自分に万一があった場合、経営する会社をその後どうすべきか、妻に伝えている夫27.6%、夫に万一があった場合、夫の会社をその後どうすべきか、夫に確認している妻25.2%
―――こうした調査結果を受けて、伊勢田 代表はこうアドバイスする。
本調査や「つぐのわ」を活用し
将来の不安を軽減へ
「本調査では、「見られたくないデジタルデータ」があると回答されている方が全体の3分の1程おり、ログインパスワードを生前から共有したくないという方も多いように思われます。
「見られたくないデジタルデータ」がある場合には、エンディングノートなどで「中身を見ずに処分してほしい」とご自身の意思を明確に伝えるとともに、万一の際に遺族が必要とするデータ(遺影となる写真データ、友人知人の連絡先、ネット証券口座の情報等)を遺族と共有できるような対策をしておくと良いでしょう。
「社長である夫(あるいは父親)が突然亡くなったら?」というワーストケースを想定し、何をどうすべきかを、夫婦または家族で普段から話し合っておくことは重要です。
私が監修として参加している、中小企業経営者の妻に特化した情報サイト「つぐのわ」では、経営者の妻特有の疑問や不安に対応し、実践的なアドバイスや有益な情報を提供しています。ぜひ、本調査や「つぐのわ」を活用し、将来の不安を少しでも軽減していただけたらと願っています」(伊勢田 代表)
経営者の妻のための情報サイト「つぐのわ」
経営者の妻のための情報サイト「つぐのわ」は、全国9,500名以上の中小企業経営者の妻が登録する事業承継情報サイト。
緊急事業承継監査協会の伊勢田篤史 弁護士 監修のもと、現経営者の突然の経営離脱・相続発生時における事前準備を促すことで、中小企業の円滑な事業承継を支援している。