埼玉工業大学 自動運転AIシステム搭載 路線バスを世界の研究者たちが視察 レベル4認可取得へ 地域公共交通課題を地産地消で解決 学生は“学び”を社会実装するリアルを体感

現一万円札に描かれている、「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一の生まれ育った地―――埼玉県深谷市。

西から北にかけて、秩父連山、浅間山、榛名山、赤城山が遠くに見えるここ埼玉県深谷市にワンキャンパスをおく“学び場”が、埼玉工業大学。

埼玉工業大学といえば、自動運転AIシステムやロボット技術、仮想空間などを産官学連携で開発を手がけ、世界中から注目を集めている。

ことし11月、ヨーロッパやアメリカ、香港などの研究者・開発陣が深谷市を訪れ、注目したのが↓↓↓

埼玉工業大学 自動運転AIバス

モビリティ・イノベーション・アライアンス、ITS Japan、東京大学生産技術研究所は、「Mobility Innovation Workshop」を開催し、そのプログラムのひとつに、ここ埼玉県深谷市で社会実装されている埼玉工業大学 自動運転AIシステム搭載 自動運転バス2台の試乗会などを実施。

ドイツ・フランスなどの欧州圏、カナダ・アメリカなどの北米、アジア圏からの研究者・開発者など50人を超える一団が埼玉工業大学を訪れ、自動運転で運行している路線バスの路線を含む一部区間に試乗し、「既存の路線バス車両に自動運転AIシステムを後付けするソリューション」を体感した。

渋沢栄一『公共の利益を追求することで、皆が幸せになり、ひいては国が豊かになる』

前半のレクチャーでは、深谷市 小島進 市長や、深谷市 武田直樹 都市整備部次長兼都市計画課長、埼玉工業大学 内山俊一 学長、埼玉工業大学 副学長(産学連携担当)自動運転技術開発センター長 渡部大志 教授らが登壇し、産官学連携で社会実装を推進する自動運転バスの現状とビジョンについて視察団に説明。

深谷市 小島市長は、「今後の地域交通を維持していくうえで、大きな課題は運転手不足」とし、こう伝えた。

「その解決策のひとつとして、公共交通への自動運転技術の導入です。ことし4月から、深谷市コミュニティバス「くるりん」北部シャトル便+周遊便に、地元 埼玉工業大学が開発した自動運転AIシステムを搭載した自動運転バスを導入し、地域交通を担っています。

渋沢栄一の『公共の利益を追求することで、皆が幸せになり、ひいては国が豊かになる』という考えに触れていただき、皆様のご意見やアイデアが、我々の地域を、ひいては世界を、より良くするための力となることを期待し、本日のワークショップが実りあるものと心から祈念しています」(小島市長)

警察や関係行政機関と連携し自動運転レベル4認可取得へ

また、深谷市 武田直樹 都市整備部次長は、自動運転バス運行で今後取り組むビジョンについて、2点を伝えた。

「ひとつは社会受容性の向上です。試乗会などで自動運転バスに実際に市民に乗っていただき、安全性などについて認識いただくことが重要です。

ふたつめは、自動運転レベル4認可取得に向けて、地域交通を管轄する警察や、関係行政機関との連携を図るべく、『深谷市レベル4 モビリティ・地域コミッティ』を構築し、実現を加速させていきます」(武田次長)

地域公共交通の課題を地産地消で解決

深谷市を走る自動運転バスの中枢を担う自動運転AIシステムを開発する埼玉工業大学の内山俊一 学長は、「地元深谷市をはじめ、地域のニーズに対応した研究・開発で貢献し、有益な人材を育成することが大学の使命」とし、こう続けた。

「今後も産官学が一丸となって、自動運転レベル4実現に向けて、自動運転技術開発を加速させ、深谷市の地域公共交通の課題を地産地消で解決していくことをめざします」(内山学長)

すぐ更新 バラせる 柔軟性 汎用性 冗長性

埼玉工業大学 副学長(産学連携担当)自動運転技術開発センター長 渡部大志 教授率いる自動運転AIシステム開発は、既存の路線バス車両に自動運転AIシステム開発を“後付け”でき、さらに「すぐ更新できる、すぐバラせる、柔軟性・汎用性・冗長性があるソリューション」が特長。

現在、埼玉工業大学開発 自動運転AIバス くるリン(深谷観光バス運行)は、深谷駅 北東に点在する渋沢栄一の生誕地やゆかりの地をめぐる定時定路線 北部シャトル+周遊便(総距離37km 所要時間112分)を自動運転レベル2で運行し、後退(バック運転)をともなう駐車場内切り返し以外はほぼ自動(運転手は監視のみ)で走っている。

「自動運転バスの新車を購入するよりも現実的」

全国各地で運転士不足不足などの課題を抱える路線バス事業者や自治体地域交通担当者、各メーカー担当者は、「既存の路線バス車両に、埼玉工業大学の自動運転AIシステムを後付け(追加)で自動化できる」「自動運転バスの新車を購入するよりも現実的」と注目している。

いっぽう深谷市としては、地元の大学が開発した自動運転AIシステムで、地域交通を担う地元の深谷観光バスの車両を自動化でき、地域住民・市民がいちはやく自動運転バスの近未来を体感できるというメリットも生む。

さらに埼玉工業大学では、こうした“社会実装されていく教材”を、学生たちが日々進化させていき、地域の安全・快適な移動を実現させていくという使命感と楽しさを共有している。

より多くの人に『移動の自由』を 埼玉工業大学 学生たちが毎日アップデート

埼玉工業大学 副学長(産学連携担当)自動運転技術開発センター長 渡部大志 教授は、海外視察団を前に、今後の目標、自動運転がもたらす可能性について、こう伝えた。

「自動運転技術で、より多くの人がより安全に移動できる環境を提供し、みんなが笑顔でいられる社会を目指します。みなさんの温かいご支援のもと、一歩一歩、社会実装へと近づいていることを実感し、感謝の気持ちでいっぱいです。

自動運転が提供できる最大のメリットは、より多くの人に『移動の自由』をもたらすことです。加えて人為的ミスによる事故を削減できます。

また、このように成長を続けている産業の中心で研究に関わった学生たちが、全国各地の第一線で活躍し、いずれは深谷に戻って地元の産業を豊かにする……そんな好循環を生み出す一助として、埼玉工業大学 自動運転専攻が大きな役割を果たすと信じています。

―――ことし4月から、工学部 情報システム学科 で「自動運転専攻」が始動した埼玉工業大学は、既存の路線バス車両に同大学が開発する後付け自動運転AIシステムを搭載した いすゞエルガミオ(深谷市コミュニティバス「くるリン」)を毎日学生たちと進化させ、全国各地の路線バス事業者や自治体、各メーカー担当者、そして地域の子どもたちから、注目を集めている。

◆埼玉工業大学
https://www.sit.ac.jp/

◆埼玉工業大学 自動運転技術開発センター
https://saikocar.sit.ac.jp/