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ここは埼玉県加須市。ミクニライフ&オートの自動車工場。
ここにいま、ラッピング前のまっ白な いすゞ エルガミオ(中型路線バス)がいる。
屋根上には GNSSアンテナ や LiDAR(光検出 測距)、前後左右のボディ角にも LiDAR や レーダー類、車内には CPU・GPU(画像処理装置)ユニット。
―――これ、どこかで見たことがある。
埼玉工業大学の“動く教材” 自動運転バスだ!
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そうだ。LiDAR の取り付け位置とか、埼玉工業大学の“動く教材” 自動運転バス(日野レインボーIIベース)にそっくりだ!
やっぱりだ。ここでツナギを着て自動運転機器を取り付けていたひとりが、埼玉工業大学 自動運転AIバス開発を率いる 工学部 情報システム学科 渡部大志 教授 副学長(研究・国際交流担当)自動運転技術開発センター長。
渡部教授は取り付け作業を続けながらこう教えてくれた。
大学保有の自動運転バスを進化させた、新車ベースのニュータイプ
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「これが、埼玉工業大学がこれまで培ってきた自動運転技術を搭載した、路線バス向け新型自動運転バス。
埼工大のスクールバスなどで走っている大学保有の自動運転バスを進化させた、新車ベースのニュータイプで、いよいよ営業運転用の路線バスに埼玉工業大学の自動運転技術を搭載したバスが登場する。
大学保有の自動運転バス(日野レインボーIIベース)よりもセンサー類も増やしたり、高精度 LiDAR を載せたりして、運動性能・危険回避性能・冗長性・安全性能を高めている」(渡部教授)
―――そんな“賢く自動で走る、製作中の自動運転バスは、どこを走るかというと↓↓↓
深谷市コミュニティバス 北部シャトル+周遊便の可能性が高い
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そう。いすゞ エルガミオ新車ベースの自動運転バスは、埼玉工業大学がキャンパスを構える地元、深谷市。
深谷市は 2023年、埼玉工業大学、A-Drive、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパン、KDDI 、ティアフォー、深谷観光バスの 7者と「深谷自動運転実装コンソーシアム」を結成。
国土交通省の「令和4年度 地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転実証調査事業)」に埼玉県内で唯一採択され、これまで埼玉工業大学保有自動運転バス(日野レインボーIIベース)を使用して実証実験を深谷市内で重ねてきた。
深谷市の発表によると、深谷市コミュニティバス 北部シャトル+周遊便に自動運転バスを投入すると伝えているから、ひょっとしたら、ここミクニライフ&オートで製作中の いすゞ エルガミオ新車ベース自動運転バスが、担うんじゃないか。
全国の路線バス事業者をはじめ、人材不足やバス路線の衰退に悩む地方自治体が注目
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ここであらためて、埼玉工業大学 自動運転技術の独自性をチェック。
埼玉工業大学が手がける自動運転AIバスは、既存の路線バス車両に自動運転AIシステムを後付け(搭載・改造)することで、自動化を実現させる点で、「自動運転バスの新車を導入するよりも現実的」と、全国の路線バス事業者をはじめ、人材不足やバス路線の衰退に悩む地方自治体が注目している。
また、埼玉県先端産業創造プロジェクトのスマートモビリティ実証補助に 2年連続、また令和 3年度埼玉県デジタル技術活用製品開発費補助などに採択されている埼玉工業大学の自動運転AIバスは、“社会実装している教材”としてもその存在感を高めている。
さらに、今回の深谷市コミュニティバス新型自動運転バスの改造・機器搭載にも、学生たちが参画しているのもアカデミックで、自動運転技術のプロフェショナルを輩出する人材育成の現場としても注目を集めている。
動く教材、地域貢献モビリティ、ワクワクさせる技術、新たなソリューション
埼玉工業大学の自動運転AIバスは、大学教育のなかでの“動く教材”として、地元に自動運転バスを社会実装させる“地域貢献モビリティ”として、地元の子どもたちを“ワクワクさせる技術”として、そして地方の公共交通を維持する“新たなソリューション”として、と、さまざまな顔を持つ。
埼玉工業大学は、この自動運転技術を全方位で公開し、自動車関連企業をはじめ、モビリティサービス事業者、路線バス事業者、地方自治体、観光事業者、大学・学校などを対象に、見学会・試乗会などを積極的に受け入れている。
「自動運転AIシステムや、実際にオートで走行する自動運転AIバスの試乗・体験機会を増やすことで、新たなアイデアの創出や、連携によるシナジー、パートナーシップなどが生み出されると思っています。
今後も、幅広い業種・業態の人たちに、この自動運転AIバスの貢献度、活躍できる場、無限の可能性を体感してほしいとも思っています」(渡部大志 教授)
―――そんな埼玉工業大学は、こうした自動運転AIシステム開発のルーツとなる同大学 情報システム学科に、AI専攻 に続き、2025年4月から 自動運転専攻 が始動する。
全国各地の実証実験を経て、さらに進化し社会実装されていく埼玉工業大学の自動運転AIシステムの今後が、楽しみ。
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