AIを活用した企業向け業務管理ソフトウェア
世界約140か国でクラウド型ワークマネジメントプラットフォーム「Wrike」(ライク)を提供する Wrike(本社:米国カリフォルニア州 サンディエゴ)の Wrike Japan(本社:東京)は、11月5日、最新のエージェンティックAIと戦略的ポートフォリオマネジメントについて、東京都内で発表した。
◆ Wrike
https://www.wrike.com/ja/
会場では、米国本社トーマス・スコット(Thomas Scott)CEO が登壇し、人とAIのための信頼できるワークマネジメントプラットフォームを目指す新たなビジョン「Delivering Transformation」(変革のデリバリー)を発表。
戦略・実行・成果の間に生じるギャップを埋め、企業全体の業務変革を支援していくと伝えた。
また、Wrike Japan アジア太平洋地域代表(Head of APAC)三浦義弘シニアディレクターも登壇し、日本発の空飛ぶクルマ(eVTOL)を開発する SkyDrive への導入事例や、日本市場における今後の成長戦略について語った。
コンテキスト(文脈) コントロール(統制) コラボレーション(協働)を重視
クラウド型ワークマネジメントプラットフォーム「Wrike」(ライク)の新たなビジョンは、「The Trusted Work Delivery Platform for People and AI」(人とAIのための信頼できるワークデリバリープラットフォーム)。
企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、業務の変革は一部の部署や担当者だけで完結するものではない。
経営が描く戦略を現場の実行につなぎ、最終的な成果として届けるまで、組織全体が一貫して動ける仕組みが求められている。
Wrike は、こうした課題に対応するため、コンテキスト(文脈)、コントロール(統制)、コラボレーション(協働)を重視。
人とAIが共通の情報を基盤に連携し、組織の業務を推進できる環境づくりを進める。
同社が目指すのは、AI を単に文章作成や情報整理に使う段階から、実際の業務プロセスに組み込み、仕事そのものの進め方を変えていく段階への進化である。
AI が業務の背景や経緯まで理解できるように 仕事に関する情報を構造化
Wrikeは2006年に設立され、企業向けワークマネジメントの分野で約20年の実績を持つ。
いまや世界150か国にサービスを提供し、グローバルで2万社以上の顧客を抱えている。
同社は、これまで培ってきたワークマネジメントの基盤を、AI時代に向けてさらに進化させる。
その背景にあるのが、企業における AI 活用の課題だ。
生成 AI への投資が進む一方、個々の社員が情報収集や文章作成などに AI を利用するだけでは、企業全体の生産性向上や事業成果に直結しない場合がある。
企画、承認、進捗管理、部門間の連携といった業務の情報が複数のツールやファイルに分散していれば、AI が必要な情報を正確に理解することも難しい。
そこで Wrike が重視するのが、AI が業務の背景や経緯まで理解できるように、仕事に関する情報を構造化すること。
、人とAIが信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)にまとめる
AI 活用を阻む課題として、企業内に散在する業務データの問題もある。
例えば、承認はメール、意思決定はチャット、合意形成は口頭、進捗管理は個別の表計算ファイルといった具合に、業務に関する情報が分断されているケース。
こうした状態では、AI に十分な情報を与えられず、古い情報や矛盾した情報をもとに回答を生成してしまう可能性もある。
Wrike は、分散した業務情報をプロジェクト、タスク、ワークフローとして体系化し、人とAIが信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)にまとめることを目指す。
その中核となるのが「Work Intelligence Graph」だ。
業務の文脈や関係性を捉え、組織内の情報をつなぐことで、AIが単独のデータだけでなく、業務の背景を踏まえて働ける環境を構築する。
さらに、権限管理やガバナンスの仕組みを備えることで、企業が安全性と統制を維持しながらAIを活用できるようにする。
エージェンティックAI「Workmates」で業務の実行を支援
今回の発表の大きなポイントのひとつが、役割に応じて業務を支援する自律型 AI エージェント「Workmates」。
従来の AI アシスタントが、利用者からの質問や指示に応じて回答やコンテンツを生成することを中心としていたのに対し、Workmates は、プロジェクト管理などの実際の業務プロセスに関わり、チームの仕事を前に進める役割を担う。
発表された「Project Manager Workmate」は、主に次の4つの領域でプロジェクトやプログラムの実行を支援する。
◆1.業務の受付(Work Intake)
構造化されていない要件定義や、ホワイトボードでのブレインストーミングの内容を、プロジェクト計画やガントチャートのタイムラインに変換する。
◆2.リソース割り当て(Resource Allocation)
リアルタイムの業務負荷やスキルセット、従業員の地域ごとのスケジュールなどを考慮し、プロジェクト全体の人員配置案を作成する。
◆3.ミーティング・インテリジェンス(Meeting Intelligence)
会議の文字起こしからアクションアイテムや進捗情報を抽出し、進行中のプロジェクトと関連付ける。
◆4.リスクモニタリング(Risk Monitoring)
プロジェクトの重要な工程や進捗、議論の内容などを分析し、後続プロジェクトの遅延リスクを検知。
プロジェクトマネージャーに原因分析の情報を提供する。
これらの機能によって、プロジェクト管理にともなう煩雑な作業を AI が支援し、人間がより重要な判断や意思決定に集中できる環境を目指す。
この Project Manager Workmate を含む Wrike Workmates は、2026年後半にかけて段階的に提供開始する予定。
AIエージェントとの連携を広げる MCP にも対応
AIエージェントの活用を企業内外へ広げるため、Wrike は MCP(Model Context Protocol)への対応も強化する。
MCP は、AIアプリケーションと外部のデータやツールを接続するための仕組みで。
今回発表された Wrike MCP サーバーでは、外部の AI アシスタントやサードパーティー製エージェントが、接続されたエコシステム全体にわたって企業の業務データを読み取り、書き込み、可視化できるようにする。
また、企業が独自に開発したAIエージェントを Wrike にチームメンバーとして統合する「Bring Your Own」エージェントにも対応する。
こうした外部 AI との連携においても、ロールベースのアクセス権限、監査証跡、人間による承認プロセスなどを備え、企業のセキュリティーやガバナンスを維持する仕組みを整える。
AI を単独で動かすのではなく、企業の業務基盤と結び付けて活用するという考え方が、今回の発表を貫く重要なテーマといえる。
戦略と現場をつなぐ 戦略的ポートフォリオ管理 SPM
今回のもう一つの重要な発表が、Shibumi の技術を活用した「戦略的ポートフォリオ管理(SPM)」。
企業が掲げる経営戦略を実際の業務へと落とし込む際には、予算、スケジュール、人材などのリソースをどう配分し、どのように成果へ結び付けるかが重要になる。
SPM は、企業の財務目標や経営戦略と、現場で進められる個々の業務を結び付け、全体を俯瞰しながら管理するための仕組み。
Wrike SPM では、主に3つの機能を提供する。
◆統合された計画
企業の財務目標と戦術的な業務を一つのプラットフォームに統合。
経営戦略と日々の業務のつながりを明確にする。
◆動的シナリオモデリング
予算、スケジュール、リソースなどに関するWhat-ifシナリオを実行。
条件が変化した場合の影響を検討し、計画の見直しを支援する。
◆価値実現の自動化
日々の業務の進捗を、戦略的・経営的なインサイトへと変換。
実行状況を把握しながら、企業が目指す成果の実現を支援する。
―――これにより、経営層が描く構想と現場の実行状況を分断させず、計画から成果までを一貫して管理できる環境を提供する。
今回発表された Wrike SPM は提供開始済み。
SkyDrive では全従業員の 97% が Wrike を活用
日本市場への導入事例として紹介されたのが、空飛ぶクルマ(eVTOL)を開発する SkyDrive だ。
SkyDrive では、全従業員の 97% が Wrike をアクティブに活用し、製造プロセスを含む多様なワークフローで利用している。
導入前には、データが分散し、チーム間の情報共有や業務の可視化に課題を抱えていた。
そこへ、Wrike の導入によって、分散していたデータを一元管理し、単一の信頼できる情報源を確立。
さらに、ダッシュボードによって進捗をリアルタイムで可視化し、製造プロセスにおける業務のスピード向上につなげている。
今後は、空飛ぶクルマのグローバルな社会実装や商用運航の実現に向けた、グループ内の共同検討におけるワークマネジメントにも活用していくという。
複数の部門や関係者が関わり、開発から製造、事業化まで多くの工程を必要とする新たなモビリティー分野において、情報を一元化し、組織全体で進捗を共有できる仕組みの重要性が、この事例からみえる。
日本市場では「Deep × Wide × Partner」の戦略を推進
Wrike Japan アジア太平洋地域代表(Head of APAC)三浦義弘シニアディレクターは、日本市場における今後の成長戦略について説明。
そのキーワードとして掲げたのが、「Deep × Wide × Partner」。
これは、特定業界への深い導入、企業内での利用範囲の拡大、そして業界特化型パートナーとの連携という3つの方向性から、日本市場での事業展開を強化するもの。
◆ Deep:注力業界への深い導入
製造業やサービス提供型ビジネスを中心に、複雑で拡張性が求められる業務フローへの対応を進める。
製造業では、設計要件や品質管理、市場投入までの工程をグローバル拠点をまたいで接続することなどを想定。
サービス提供型ビジネスでは、営業、デリバリー、顧客に関わる情報を一元化し、業務の効率化を支援する。
◆ Wide:部門横断で企業全体へ展開
一部門や一部の業務での利用にとどまらず、複数部門を横断した活用へと広げる。
Work Intelligence Graph によって部門や拠点を接続し、経営層が企業全体の業務状況を把握できるとともに、AI が組織内の文脈を理解できる基盤を目指す。
◆ Partner:業界特化型パートナーとの連携
現在は直販を中心に、深い導入と成功事例の蓄積を進めている。
2027年以降は、直販に加えて業界特化型パートナーとの戦略的な提携を進める方針で、コンサルティング、広告・マーケティング、システム開発・SI、人材サービス、建設などの領域を想定している。
部門や拠点をまたぐ複雑な業務を 深く 正確に 安全に管理
また、Wrike が一般的なタスク管理ツールとは異なる価値を発揮する領域についても教えてくれた。
企業規模が大きくなり、複数の部門や拠点が関係するようになると、単純なタスク管理だけでは業務全体を把握することが難しくなる。
例えば、製造業では、全体の製品開発計画と各工場の現場タスクが分断されることや、拠点間の依存関係が見えにくくなることが課題になる。
また、サービス提供型ビジネスでは、営業、業務遂行、顧客対応などの情報が部門ごとに分かれ、組織全体の稼働状況や収益を把握しにくくなる場合がある。
Wrike は、こうした課題に対し、次の3つの管理機能を重視する。
◆ 深い階層管理: ポートフォリオ、プロジェクト、タスク、サブタスクまでを一元管理する。
◆ 依存関係の高度な管理: 部門や拠点をまたいで複雑に絡み合う業務の依存関係を把握する。
◆ 高度なアクセスコントロール: 社内外の関係者に対して細かな権限設定を行い、機密情報を保護する。
―――こうした機能を組み合わせることで、企業内の複雑な業務を、深く、正確に、そして安全に管理することを目指す。
AIが業務の改善まで担う「自己修復型ワークフロー」も視野に
Wrike はさらに、将来のビジョンとして「自己修復型ワークフロー」も提示した。
これは、AI が業務プロセスのボトルネックを自動的に特定し、人間の監視のもとでワークフローの改善を実行するという考え方。
例えば、業務の進行状況や実際の成果を分析し、ポートフォリオ管理者にリソース配分の見直しを提案したり、プログラムリーダーに業務受付フォームの最適化を促したりする。
AI が単に指示された作業を実行するだけでなく、業務の状況を継続的に把握し、改善につながる提案まで行うというイメージだ。
