シーフードレガシー 大阪・関西万博で「選んで守るサカナの未来」を世界発信 世界的危機にある水産資源 違法 IUU漁業に消費者と企業が加担しないアクションへ前進

「万博という日本から世界にメッセージを発信する場で、海と人のつながり方や魚の食べ方について、仲間といっしょにいい未来をつくっていけるというメッセージを伝えることができた」

―――閉幕した大阪・関西万博をこう振り返るのは、大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME」(認定NPO法人ゼリ・ジャパン出展)でサステナブルシーフードについて考える1週間プログラム「選んで守るサカナの未来 Week」を開催した、シーフードレガシー 花岡和佳男 代表取締役社長。

大阪・関西万博「選んで守るサカナの未来 Week」では、持続可能な水産業の実現をめざす国内外の活動団体や漁業者、認証制度の運営団体、水産行政担当者らが登壇し、サステナブルシーフードを取り巻く課題や成功事例、必要なアクションについて議論を深め、万博来場者の理解促進に向けた参加型プログラムも実施し注目を集めた。

―――なかでも、万博来場者たちを驚かせた衝撃事実や、課題解決へ向けて一般消費者たちも意識・行動すべきトピックスを、ここでチェックしていこう。

水産資源を枯渇に追いやるIUU(違法・無報告・無規制)漁業の終わらせ方

いま、世界の水産業界のサステナビリティで「最大の脅威」とされる IUU漁業=違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported, Unregulated)漁業の実態と、その撲滅に向けた北西太平洋での政府間連携による取り組みなどについて、水産庁資源管理部 福田工 審議官や、カナダ漁業海洋省 ニーアル・オディー博士らが課題について解説。

福田審議官は「水産資源管理のための規制を守ろうとすると、船の登録や機材購入などのコストが発生する。利益をあげようとした結果、違法なIUU漁業が生まれているが、違法漁船を取り締まる船の派遣にも費用がかかり、政府としても大きな負担になっている」と問題点を指摘。

またシーフードレガシー花岡和佳男代表は「新鮮で安い魚を買うことが賢い買い物の仕方という意識を持つ人が多いと思うが、安さだけを追求すると違法な漁業が生まれてしまう可能性がある。取り締まりにも多額の税金が使われているが、消費者がしっかりとルールを守って捕獲された魚を買うことが IUU漁業の撲滅に効果的なのではないか」と消費者による選択の重要性を投げかけた。

MSC認証・ASC認証の魚を選ぶ

花岡代表がいう「しっかりとルールを守って捕獲された魚」を選ぶ、ひとつの選択肢となるのが、MSC認証(水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な天然漁業に関する認証)やASC認証(責任ある養殖水産物のための認証)。

スーパーマーケットの鮮魚コーナーや冷凍コーナー、飲食店などに、こうした水産エコラベルやステッカーが貼られた商品・メニュー「サステナブルシーフード」を選ぶことが重要といわれている。

サステナブルシーフード どうやって選ぶ?

2016年にカツオ・ビンナガマグロ一本釣り漁業でMSC認証を取得し、2024年に日本漁船で初めてカツオ・キハダのまき網漁業によるMSC認証を取得した明豊漁業(宮城県塩釜市)松永賢治氏は消費者にこう願う。

「最初に認証を取ってから10年近く経つが、なかなか日本国内で普及しない。将来世代に魚を残していくための取り組みを理解し、そうして獲られた魚を選び続けてほしい」

また、2019年に日本の和食店で初めてMSC認証・ASC認証の水産物の提供を開始した、きじま(横浜市)杵島弘晃氏は「認証制度は資源管理のためのもので、味に関しては何も担保されていない。日本のお客様は魚の味にかなり厳しいので、たとえ認証された魚でも、刺身で出せるかどうかといった問題もある」と指摘し、それでも認証水産物を使う思いについて、こう伝えた。

「家業として店を営んできたが、子どものころに比べて魚の量も種類も少なく、サイズも小さく、脂の乗りも悪いと感じていた。昔に食べた魚のおいしさ、感動がずっと続いてほしいと思い、MSC認証・ASC認証の水産物の導入を始めた」

日本初 水産流通企業7社「責任ある水産物調達ラウンドテーブル」始動

大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME」でサステナブルシーフードについて考える1週間プログラム「選んで守るサカナの未来 Week」を開催したシーフードレガシーは10月2日、日本国内の水産物関連企業7社が参加する「責任ある水産物調達ラウンドテーブル(The Japan Responsible Seafood Roundtable)」の立ち上げを発表。

個社の努力だけでは解決が難しい水産物調達の課題に対し、企業間の協働による解決をめざす動きとして、世界中が注目している。

シーフードレガシー花岡代表は、大阪市内で同時開催したサステナブルシーフード・サミット2025 in 大阪(TSSS2025:シーフードレガシー・日経ESG主催)で、日本国内の大手水産物関連企業7社が参加する「責任ある水産物調達ラウンドテーブル」発足について、こう期待を込めた。

「日本の大手水産関連企業が集まり、公に連携して何かをやっていくという動きはこれまでなかった。競合他社であり、自社のサプライヤー情報を他社にも伝えることになるというセンシティブな課題があったが、それでもいっしょに取り組む枠組みができたことは大きな転換点であり、日本のイニシアチブでしっかりと世界をリードしていく体制をつくっていくための一歩になる」

―――人権・環境課題を無視し続けて世界中で横行する違法漁業「IUU漁業」(=違法・無報告・無規制(IUU:Illegal, Unreported, Unregulated)漁業)を撲滅し、持続可能な海洋資源にむけて、動き始めた日本企業連合。

企業・団体と個人が同じ課題意識をもって“とる・選ぶ・買う・食べる・伝える”のサイクルが回り始めた。