「ここ埼玉県深谷市にキャンパスを構える埼玉工業大学が開発する、後付け自動運転システムを活用し、地産地消の自動運転バス営業運行を、どこよりも早く実現させたい」
そう意気込むのは、埼玉県深谷市。この深谷市で、埼玉工業大学、A-Drive(神奈川県横浜市)、アイサンテクノロジー(愛知県名古屋市)、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、KDDI(東京都千代田区)、ティアフォー(愛知県名古屋市)、深谷観光バス(埼玉県深谷市)の8者が連携し、レベル4による路線バス営業運転実現に向けて動き出した。
「社会の関心が集まる技術の先進事例をつくっていきたい」
高度技術の市外流出、ドライバー不足、超少子高齢化、交通予算増など、どの地方でも抱えているこうした課題に対し、地元にキャンパスを構える大学や民間企業と連携し、技術を結集させて路線バスの自動運転化をめざし、「渋沢栄一の故郷から、最初の自動運転路線バスを走らせたい」と意気込むのは、深谷市 小島進 市長。
「ここ深谷市は、農村部と都市部の療法が、平地のなかで共存している、日本の縮図ともいえる地。日本経済の礎を築いた渋沢栄一の故郷で、社会の関心が集まる技術の先進事例をつくっていきたい」(小島市長)
兵庫・愛知・栃木・千葉と自動走行、1万km超え
そこで、レベル4自動運転路線バスの実現に向けて大きな推進力を持つのが、埼玉工業大学のスクールバスとしても活躍する後付け自動運転システム搭載の路線バス(日野レインボーIIベース)だ。
埼玉工業大学の日野レインボーIIベース自動運転バスは、独自開発した後付け自動運転システムを実装し、レベル2で自動運転できる。
既存の路線バス車両を活用し、後付けで自動化できるということで、全国の路線バス事業者や自治体が注目している技術のひとつ。
2019年からこれまで、兵庫県 播磨科学学園都市、愛知県 日間賀島、長野県 塩尻市、栃木県 茂木町、千葉県 千葉市、愛知県 常滑市、千葉県 幕張新都心、愛知県 長久手市と、各地での実証実験を重ね、日野レインボーIIベースの自動運転バスは、自動運転走行距離1万1000kmを超えた。
レベル4自動運転バス営業運転へ向けて
また、「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ『青天を衝け』にあわせて埼玉県深谷市で運行した『渋沢栄一論語の里 循環バス』は、路線バス営業用の緑ナンバーを取得し、一般路線バスとしてレベル2で自動で走ってみせた。
―――6月27日には、深谷市役所で、深谷自動運転実装コンソーシアム連携協定締結式が行われ、深谷市 小島進 市長、同 長原一 副市長、埼玉工業大学 内山俊一 学長、同 渡部大志 教授、アイサンテクノロジーモビリティ・サービス事業部 山崎祐嗣 部長、A-Drive 岡部定勝 代表取締役社長、損害保険ジャパン 和田喜勝 埼玉支店長、KDDI オープンイノベーション推進1G 松田慧 グループリーダー、ティアフォー岡崎慎一郎 Vice President、深谷観光バス 越塚聡一 常務取締役らが登壇。
レベル4自動運転路線バスを、「今年度内に実現させたい」といういま、埼玉工業大学の日野レインボーIIベース自動運転バスは、どこをどう走ってきて、今後どんな走りをみせてくれるか―――。
このあと、このバスがたどってきた軌跡と技術進化、パッケージ型自動運転バスとの違いや後付け自動システムのアドバンテージを、あらためてみていくことにしよう。