オデッセイ秋葉尊代表が解説、有価証券報告書への人的資本情報記載義務化にむけて企業が取り組むべきこと_かんたん 直感的モニタリングが可能なダッシュボードも提供開始

決算を2023年3月に迎える企業から有価証券報告書へ人的資本に関する情報の記載が義務化されるなど、投資家をはじめさまざまなステークホルダーが、企業の人的資本経営への取り組みに注目しているいま、企業は今後どのように取り組んでいくべきか。

人事領域に特化したITコンサルティング事業を手がけるオデッセイの秋葉 尊 代表取締役社長は、「世界の流れをみると、機関投資家を中心に持続的に成長できる企業を見極めるために、財務指標のみの評価から人的資本を含むESG(環境・社会・ガバナンス)の視点も加味した企業評価へ主流が変わりつつある」という。

ここからは、オデッセイ 秋葉 尊 代表に、人的資本関連情報の開示義務化にあわせて企業が取り組むべきステップを、教えてもらおう。

企業価値向上のためには避けて通れない

「世界を震撼させた2008年のリーマンショックで、投資家は自らが優良企業と目していた企業が軒並み業績を悪化させたことで大きな痛手を負いました。

これがひとつの契機となって世界の投資家たちは持続的に成長していく会社を的確に見極めるためには、財務情報だけを見ていても限界があるということに気がついたのです。

そこで注目したのが、人的資本を含むESG(環境・社会・ガバナンス)の視点です。なかでも継続的に人に投資をして、経営にその成果を表わすことができている企業なのか、いわゆる「人的資本経営」の実現に向け取り組んでいる企業なのか否かが重視されるようになってきました。

そのようなマーケットの意向に連動させるかのように、世界の各国が上場している企業に対して人的資本に関連する情報の開示を求めるようになっていきました。

その流れは欧州、アジア、米国、そして日本にも到達し、日本では今年から上場企業の有価証券報告書への人的資本に関する情報の記載が義務化されました。

このような世界の潮流のなか、日本においても企業が株価上昇や企業価値の向上を目指すのであれば、人的資本に関連する情報の開示は避けて通れないものになってきました。

欧米の人的資本情報開示から一歩遅れて、日本でも動き始めた人的資本情報の開示義務化。今後を考えると更に開示要求項目が増えていく可能性がありますし、企業価値を向上させるためには、積極的に人的資本関連の情報を開示していく必要があります。

このような変化に企業はどのような備えをすれば良いのでしょうか。準備進めるうえでの大まかなプロセスは以下の3つになると思います。

1:管理すべき項目を決める

最初に行わなければならないのは、人的資本に関してどんな情報を、どのような視点で管理するかを決める(指標化する)ことです。これは簡単そうで結構大変なことだと思います。

正攻法で検討を進めた場合、企業としてのパーパス(存在意義)やビジョン(あるべき姿)を実現するために管理すべき事項や、経営戦略や人事戦略を遂行していくために必要な情報は何かを企業ごとに検討する必要があるからです。

昨年実施したある調査でも60%以上の企業が人的資本に関する情報の指標化ができていないとの情報があり、多くの企業がこの段階で苦戦していることが見受けられます。

そこで、私は人的資本に関する情報を指標化するアプローチのひとつとして、ISO30414 での管理項目の活用をお薦めしています。

世界の国々や企業において、人的資本情報の開示や社内管理する情報を ISO30414 ベースにしているケースも多いようなので、この ISO30414 に規定されている11領域58項目のなかから、自社として重視すべき項目や社外に開示すべき項目は何かを検討していけば、比較的早く管理すべき情報項目を決めることができると思います。

2:情報を活用できる仕組みを作る

2番目は、管理対象と決めた人的資本関連情報を一元管理して、自由に参照したり、社外への開示も含め活用できる仕組みを整備することです。管理対象にする情報が決まっていれば、タレントマネジメントシステムで比較的容易に仕組み作りができるはずです。

3:社外への開示とともに社内活用を進める

最後は、社外への開示だけでなく社内活用を進めることです。社外への情報開示については、自社として開示したい情報や、開示が義務化されている情報について正確に開示できるように、タレントマネジメントシステムを活用して情報を抽出/加工し開示に備えます。

並行して、開示している情報やその他の重要な項目について随時モニタリングしながら、満足できるレベルにあるかを確認しつつ、目標レベルを下回る項目があれば、原因を究明し対策を打たなければなりません。

確認している情報は結果でしかないので、そのプロセスを追跡して成果が出ていない要因を確認する必要があります。

これらの一連のプロセスである「人的資本のPDCA」においても、タレントマネジメントシステムは重要な役割を担うことになります。

人的資本情報の開示や社内活用を円滑に進めていくうえで、人財情報を管理しているタレントマネジメントシステムは必要不可欠な仕組みになると言えるでしょう。

開示することだけが目的にならないように

人的資本情報の開示が義務化されたこともあり、最近は情報を開示することにフォーカスした話が多いように感じています。

しかし、開示しているのは自社にとって重要な人的資本に関連する情報であり、そして投資家が投資可否を判断するうえで参考にするような重要な情報でもあるのです。

社外に開示することに留まらず上述のような社内活用を積極的に進めて、「人的資本のPDCA」を回せる仕組みづくりが重要です。

また、開示が義務化された情報に限定することなく、自社の強みを人的資本情報で証明するような積極的な情報開示も必要でしょう。

企業価値の向上に繋がる重要な情報なので、社外/社内ともに有効に活用することをお薦めします。

人的資本情報のダッシュボード化でモニタリングを容易に

「人的資本のPDCA」を確実に回していくためには、自社として管理する情報項目が計画値(目標値)に対しどのような状況にあるのか随時確認できなければ、次のアクションがとれません。

しかし現実的には人的資本関連の情報が散在していて、管理項目の状況をタイムリーに確認するのは難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。

そこでオデッセイは、人的資本関連情報の社外への開示や社内でのモニタリングに役立つ「Ulysses/人的資本ダッシュボード」を開発し、2022年末に1次リリースしました。

この「Ulysses/人的資本ダッシュボード」には5つのメリットがあります。

◆1 すぐに使える
→SAP SuccessFactors + SAP Analytics Cloud(SAC)を利用して開発済みなのでユーザー側で開発する必要がなく、すぐに使うことができます。

◆2 簡単にはじめられる
→ISO30414の項目に基づいてプリセットされているので、自社で管理する人的資本情報が絞り込めていない状態でも使いはじめることができます。

◆3 わかりやすい
→分析用クラウドサービスであるSAP Analytics Cloud(SAC)を活用しているため人的資本データが直感的に可視化されているので、管理したい項目の状況が一目瞭然です。

◆4 義務化された今年度決算の情報開示に間に合う
→有価証券報告書への記載義務化事項もダッシュボード化しているのですぐに対応できます。

◆5 追加費用がかからない
→導入テンプレートの追加機能としてのリリースのため、SAP SuccessFactorsの導入費用のみで、ダッシュボードの費用がかからないのでリーズナブルです。

「社内で人的資本情報の指標化まで進んでなくとも、 ISO30414 で規定されている11領域58項目をベースに人的資本情報や開示義務化事項を可視化してモニタリングするところからスタートするアプローチでも価値があると思います。」(オデッセイの秋葉 尊 代表取締役社長)

―――秋葉代表が率いるオデッセイは、SAP SuccessFactors を活用した人事ソリューションで、人的資本経営実現をバックアップし、企業競争力の向上を支援していくという。

◆オデッセイ
https://www.odyssey-net.jp/index.html