需要高まる血漿分画製剤、若年層のさらなる献血への協力を_武田薬品工業・日本血液製剤機構・KMバイオロジクスが現状を説明「みんなで元気のおすそ分けを」

輸血用のみならず、医薬品の製造にも活用されている、献血で得られた血液。

毎年7月は「愛の血液助け合い運動」月間ということで、若年層の献血がさらに求められているいま、あらためて献血の重要性を共有したい。

献血の話題のなかでも、いま知っておきたいのは、「血漿分画製剤」(けっしょうぶんかくせいざい)。

人の血液から造られる医薬品は「血液製剤」とよばれ、そのなかでも「血漿分画製剤」(けっしょうぶんかくせいざい)とよばれる製剤の需要は、日本のみならず世界的に増加しているなか、その認知率は20%未満という現実―――。

血液製剤の原料である血液は、必要量を自国で確保することを基本とするなか、日本国内では若年層の献血者数が減少傾向にあり、これまで以上に血液製剤の安定的な供給に向け、若年層の献血が求められている。

血漿分画製剤を製造する3社がアクション

こうした現状を打破すべく、血漿分画製剤を製造する武田薬品工業・日本血液製剤機構・KMバイオロジクスの3社による血漿分画製剤認知向上委員会が説明会を開催。

(画像左から)KMバイオロジクス 松岡岳人氏、千葉大学 脳神経内科 三澤園子 准教授、日本赤十字社 血液事業本部 辻本芳輝 広報係長、日本血液製剤機構 迫田征大氏、武田薬品工業 児玉友里氏が登壇し、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)の当事者 池崎悠さんがオンラインで、血漿分画製剤の現状について多角的に共有した。

需要が増加している血漿分画製剤とは

血漿分画製剤とは、原料血漿から医薬品となる血漿タンパク質を取り出して医薬品にしたもの。

おもに、免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤、血液凝固因子製剤があり、その他にも多くの製剤がある。

免疫グロブリン製剤は、重症感染症やある種の神経疾患、川崎病の治療に、アルブミン製剤はやけどやショックなどの際に、凝固因子製剤は血友病などの治療に用いられる。

これらの血漿分画製剤は、代替として使用できる医薬品が限られ、その役割は非常に大きい。

血漿分画製剤による治療を必要としている患者に各種の血漿分画製剤が恒常的・安定的に供給される必要がある。

また近年、国内の血漿分画製剤に用いられる原料血漿の必要量が増加。その主たる要因に、免疫グロブリン製剤の需要拡大があげられる。

免疫グロブリン製剤は、重症感染症、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)をはじめとする神経免疫疾患、川崎病などの自己免疫疾患の治療に幅広く使われるようになった。

その背景には、疾患の診断技術向上による患者数の増加、治療アクセスの拡大があり、直近の20年間で血漿分画製剤の需要は世界中で高まっている。

国内でも、2010年代ごろからさまざまな疾患への適応が追加されたことによって免疫グロブリン製剤の需要は増加している。

献血協力に感謝、血漿分画製剤があるから

中学3年生のときにCIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)を発症した池崎悠さんは、顔を洗う、はしを使う、着替える、立ち上がるなどの日常動作に支障が出ていたが、2019年から免疫グロブリン製剤による維持療法を受け始めた。

その結果、日常生活のレベルが上がり、出産。いまも病と向き合いながら子育てをはじめ、難病当事者支援活動などに取り組んでいる。

「血漿分画製剤である免疫グロブリン製剤の治療は、疾患に振り回されずに、わたし自身が“人生のハンドル”を握っていくために必要不可欠です。

CIDP患者にとって、免疫グロブリン製剤は、当たり前の日常生活を送るための“命綱”。もし再発したとしても、治療できると思えることが患者にとっては心強く、大きな力になります。献血に協力してくださるひとり一人に、心から感謝の気持ちをお伝えしたいです」

元気のおすそ分けに協力を

約30名のCIDP患者を診ている千葉大学 脳神経内科 三澤園子先生は、「元気のおすそ分けに、献血に協力を」と訴える。

「免疫グロブリン製剤をはじめとする血漿分画製剤は、献血で提供いただいた血液からつくられます。

CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)の患者さんたちにとっては、献血に協力してくださる方の存在が必要不可欠です。

元気な方たちが、“元気のおすそ分け”をして、元気に過ごせる人をひとりでも増やしてほしい。ぜひ献血に協力を」

血漿成分献血専用ルームが快適すぎる

日本赤十字社では、近年需要が増加している血漿分画製剤の原料となる「原料血漿」を安定的に確保すべく、血漿成分献血専用ルームを順次開設。

これまで、2021年10月愛知県名古屋市西区、2023年4月に大阪府大阪市北区曽根崎、5月には東京都中央区八重洲に開設してきた。

この東京八重洲の献血ルームでは、開設以来この1年間の延べ献血者数が2万1,899人(2024年4月30日現在)をマーク。

1日平均60.5人が同ルームで献血を行っている。

従来の献血ルームでは一部を除いて、すべての種類の献血(200mL献血・400mL献血・血漿成分献血・血小板成分献血)を行っていたのに対し、この血漿成分献血専用ルームでは、原料血漿のみを採血する献血を行っている。

これにあわせ、運用面では献血にかかる時間がほぼ均一という特長を活かし、東京八重洲、大阪曽根崎、名古屋市中区の各献血ルーㇺでは献血者が電話やWeb、アプリを使って都合の良い時間を予約する完全予約制での運用を実現。

完全予約制とすることで献血者の待ち時間も解消され、有名ホテルのロビーのような快適空間で、くつろぎながら献血に協力できる。

詳細は、公式サイトをチェックして、行ってみて↓↓↓
https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/tokyo/place/m1_01_17_room.html