中部国際医療センター 不破信和 医師「舌癌は切らずに治療できる選択的動注併用放射線治療を」 頭頸部癌治療の最新情報を公開、ことし夏には陽子線がん治療センターもオープン

日常で、食べる、話す、飲む、味わうなど、生きるうえで必要な機能、口腔。

この口の中にできる癌が、口腔癌(こうくうがん)。この口腔癌のなかでも半数を締めるのが、舌癌(ぜつがん)といわれている。

この舌癌を患った人やそのまわりの人たちに、「舌癌は、切らずに治療できる選択的動注併用放射線治療を」と唱え、多くの患者を救ってきた医師が、中部国際医療センター 放射線治療科 不破信和 統括部長(同 陽子線がん治療センター 施設長)。

2022年1月に岐阜県美濃加茂市健康のまち一丁目1番地にオープンした中部国際医療センターは7月中旬、東京・銀座で「舌癌治療の最前線 切らずに治療できる『選択的動注併用放射線治療』」セミナーを開催。

不破信和 医師が「舌癌を患い外科手術で切除を迫られている人は、わたしたち中部国際医療センターに訪ねてほしい」と伝えた。

この夏、陽子線がん治療センターもオープン

昨年オープンしたばかりの中部国際医療センターは、がん治療・救急医療・地域連携をより強化した新しい医療体制で、「地域の、日本の、世界の医療拠点」をめざす岐阜・中濃エリア最大規模の医療複合施設。

最新の高度専門医療機器を積極導入し、2023年夏には日本初の陽子線治療装置「プロビーム」(バリアン社製)を採用した陽子線がん治療センターもオープンする。

この陽子線がん治療は、がんに集中的に照射でき、また癌のまわりの正常な部分への照射も少なく済むことから、副作用があまりなく、通院で治療を受けることもできるというメリットがある。

また現在は、肺がん、肝臓がん、膵臓がんなどの治療が可能で、小児がんや局所進行性前立腺がん(転移を有するものを除く)など、一部疾患は保険が適用されている。

この保険適用について、不破信和 医師が伝えた最新トピックスについては、後述する。

選択的動注併用放射線治療法で舌癌は切らずに治療を

今回の中部国際医療センター「舌癌治療の最前線 切らずに治療できる『選択的動注併用放射線治療』」セミナー(東京・銀座)で、不破信和 医師は、「舌癌は近年、発症者・死亡者ともに年々増加傾向にあり、とくに若年層の発症例も増えている。今後もさらに増えるだろう」という。

「舌癌を患い、外科手術で舌を切除する前に、わたしたちがいる中部国際医療センターで、切らずに治療できる選択的動注併用放射線治療法を」と不破信和医師は力説する。

選択的動注併用放射線治療法は、癌を栄養する動脈にカテーテルを通して、抗がん剤を直接投与する治療法のひとつ。

治療を目的とする癌につながる動脈を選択し、そこにカテーテルを通して抗がん剤を直接投与しながら、併せて放射線(陽子線)治療も行っていく。

抗がん剤の濃度を高くできるため、それだけ治療効果が高まり、抗がん剤の総量を減らすことが可能になるため、全身への副作用が軽減されるというメリットもある。

「手術と同等あるいはそれ以上の治療成績」

進行性舌癌に動注療法で30年以上前から取り組み、その開発と技法をリードしてきた中部国際医療センター不破信和医師は、化学メーカーが開発した外頸部動脈に一定期間取り付けられるECAS(External Carotid Arterial Sheath)と、ECAS から挿入し目的動脈を選択するマイクロカテーテルを用いて、高い治療効果をあげている口腔癌治療のパイオニア。

浅側頭動脈にECASを挿入し、先端を顎動脈と顔面動脈の間に留置。癌の部位に合わせた目的動脈を選択し、ECASの頭の部分からマイクロカテーテルを挿入(進行性舌癌の場合は、舌動脈と顔面動脈に挿入)、濃度の高い抗がん剤を癌に直接投与していく。

治療回数は腫瘍のサイズや効果によって決定し、ECASは1か月以上、身体につけたままにする。

その間に、放射線(陽子線)治療も並行して行い、舌を切除することなく、機能障害も残さない治療を可能にした。

「ECASによる動注療法により、安全かつ確実に複数の動脈に動注治療が可能となり、手術と同等あるいはそれ以上の治療成績が得られるようになった」(不破信和 医師)

陽子線がん治療センターで仕事を続けながら治療を

日本初の陽子線治療装置「プロビーム」(バリアン社製)がこの夏に導入され、陽子線がん治療センターがこの夏にオープンする中部国際医療センター。

この陽子線がん治療センターでは、1日1回の治療で照射時間は15分程度、照射中に痛みを感じず、身体への負担も少なく、仕事を続けながら治療できるといったメリットがある。

また陽子線治療は、がん病巣にピンポイントで高いエネルギーで照射できるため、ほかの正常な細胞へのダメージが小さく、放射線の影響を受けやすい器官の近くにある病巣へも照射可能。

不破信和医師は最後に、肺癌・食道癌の保険収載についても言及し、こう期待を込めた。

「中部国際医療センターでは、頭頸部癌では動注治療併用陽子線治療を、また2024年には保険収載される可能性のある進行肺癌・食道癌に対して薬剤との併用に取り組み、治療成績の大幅な改善に取り組みたい」

―――舌癌をはじめとする口腔癌の選択的動注併用放射線治療の最新情報については、中部国際医療センター・不破信和 医師の公式サイトへ。

中部国際医療センター
https://cjimc-hp.jp/

不破信和
https://fuwa-nobukazu.com/